こんにちは。はる(@haru_nutriology)です。
前回、赤ちゃんが必要としているメインエネルギーは脂質であること、1日のカロリーの60%を糖質からとっている今の食生活は妊娠・出産に不利であることを宗田医師の研究から紹介しました。
健康な妊娠・出産のためには良質な脂質メインの食生活にする必要があるわけですが、今回はなぜ高血糖な状態が妊娠に悪影響を及ぼすのか、血糖値をさげる唯一のホルモン”インシュリン”とは何か見ていきます。
妊娠に関する脂質のメリット、糖質のデメリットのまとめ
脂質をメインエネルギーとしていると、妊娠に関して次のようなメリットがあります。
- 精子数が増加
- 性ホルモンの材料が増える
- 肌が潤い、しっとりする
- 胎児のメインエネルギーは脂質のため、健康になる
- 妊娠太りがない = 赤ちゃんが育つ分だけ体重増加し、出産後元に戻る
- 血糖値の乱高下がないため、インシュリンも出ず、お腹が空きにくい
- インシュリンが出ないので、巨大児になりにくい
- 日中の急激な眠気に悩まされない
- ビタミン、ミネラルの作用を助けてくれる
反対に、糖質をメインエネルギーとしていると妊娠・出産へ次のような悪影響があります。
- 赤ちゃんを作るための材料不足になる
- タンパク質、脂質と比べ圧倒的に太りやすい
- 肌が荒れる
- 赤ちゃんが巨大児になる=難産
- 妊娠糖尿病発症のおそれ
- 糖化によってタンパク質が変成、細胞や酵素の正常な機能を損なう恐れ
- 日中の急激な眠気や空腹
- 赤ちゃん作りに必要なはずのビタミン・ミネラルが浪費される
- 産後うつや精神障害の要因になる
- 子どものIQが低くなる可能性
これらの弊害は全て高血糖とインシュリンの過剰放出による血糖値の乱高下が要因となっています。
さらに産婦人科医の宗田医師は ” 妊娠糖尿病は糖質を拒否している状態かも知れない ” と指摘しています。
血糖値とは何か
血糖値が高いの状態が悪いのは常識ですが、ごはん・パンやお菓子などが血糖値を上げるとはそもそもどういう現象なのでしょうか。
ごはん、パンなどの主成分はデンプンです。デンプンはブドウ糖という最小単位糖がいくつも繋がって集まったものです。
つまりごはんやパンを小さく分解するとブドウ糖になります。
これが消化の作業であり、唾液や膵液に含まれる消化酵素がブドウ糖の繋がりを切ることを言います。
なぜ分解する必要があるかと言えば、小腸から吸収するためです。
小腸では大きな物質は吸収出来ないので小さくする必要があります。(もし、大きなものも吸収できる穴があれば、どんな異物も体内に入ることが出来てしまいます)
小さくすることで、小腸の壁から血管に入れるようになるため、血液中に溶けて全身に栄養が運ばれます。
デンプンも砂糖が入ってる菓子も、消化で小さく分解されて、結局はブドウ糖のような最小単位の糖として吸収されます。
この血液中でのブドウ糖の濃度が ” 血糖値 ” です。
血糖値が高い、低いは言い換えれば血液中のブドウ糖が多い、少ないということです。
GI値:グリセミック・インデックス(甘さ指数)
急激に血糖濃度を上げるもの
早く消化されれば、急激に血液中のブドウ糖の数が増えるので血糖値を上げます。
” 消化の良いもの ” というと身体によさそうなイメージですが、糖質の場合は ” 血糖値を急激にあげる ” という意味でもあります。
飲み物は特に落とし穴となりがちです。
消化が良くて血糖を上げやすい白米や食パンでも分解しなくてはならないので、ある程度の時間はかかります。
それに比べて液体は消化する必要がないため(ブドウ糖同士がはじめからバラバラの状態)、すぐさま吸収されて急激に血糖を上げて短い時間で吸収されます。
” 清涼飲料水には実は砂糖○○個が含まれています ” といった説明は見たことがあると思います。
糖質の総量より問題なのはこの急激な吸収と血糖値増加です。
ゆっくり血糖濃度を上げるもの
反対にそばやオートミール、全粒粉のパスタなども糖質ですが、ブドウ糖以外に食物繊維やミネラルが豊富なため、消化分解に時間がかかり、血糖値の上昇はゆるやかになります。
これらの血糖の上がりやすさをグリセミック・インデックス[GI値、意訳:甘さ指数]といい、値が低いほうがゆっくり吸収されます。
” グリ ” は ” 甘い ” の意(お菓子の”グリコ”は甘い)、インデックスは指標の意味です。
インシュリンと血糖値の調整
血糖値を下げるホルモンはインシュリン1つのみ
血液中のブドウ糖濃度が上昇すると血液が粘っこくなってしまい、毛細血管が詰まりやすくなります。
糖尿病は血液中に糖が溢れかえり、毛細血管の多い網膜や腎臓が詰まることが最大の弱点です。
よって、血液中に増えた余計な糖分は下げなくてはならない訳ですが、ここで登場するホルモンがインシュリンです。
インシュリンは血液中の糖を細胞に送り込むことで、血糖値を下げてくれます。
ただし、筋肉細胞だけでなく、脂肪細胞にも糖を届け、体脂肪の合成をしてしまうために肥満が起こります。
しかもインシュリンは微調節が効かず、放出されすぎてしまうという難点があります。
” 生命活動に無駄はない ” と度々言ってきましたが、生体の合理性はどこにいってしまったのでしょうか。
血糖を下げるホルモンが1つしかない理由
少し脱線すると、人類は数百万年の長いこと骨髄、肉や木の実などのタンパク質と脂質をメインに生活してきました。
穀物※を食べるようになったことですら農耕が始まってからの2000~3000年程度です。
※ただしこれらはGI値が低い
大量に精製された糖を取れるようになったのはわずか100年程度です。
加えて人類史の大半が飢餓との戦いでしたから、食料が不足する方が圧倒的に多く、血糖値をあげる手段をいくつも持つよう進化したのです。
血糖値を上げることは闘争、逃走などに役立つ瞬発的動きを高めるエネルギーとして使われるため、生存確率があがります。
そのため、血糖値をあげるホルモンはいくつもあります。
反対に血糖値を下げる必要がある飽食な機会は少なかったため、血糖を下げるホルモンも自然と少なくなりました。
インシュリン1つしか血糖値をさげる手段を持たないのは生体の合理性なのです。
空腹も眠気も糖質摂取による低血糖が要因
血糖値をあげるホルモンはいくつもあるため、微調整が効きます。
反対に血糖をさげることはインシュリン1つのみの働きに頼るので微調整が効きづらく、下げすぎてしまう(細胞内へ吸収しすぎてしまう)弊害が出ます。
血液中の糖を吸収しすぎるということは血中の糖が少なくなり、糖をたべているのに”低血糖”となってしまいます。
低血糖になると、
①血液中にブドウ糖が不足している
⇓
②エネルギーが不足してる、何か食べなきゃ!
⇓
③脳に空腹信号を出せ!
というシグナル伝達が起こり、お腹が空きます。
これがインシュリンによる空腹要求です。
” 朝ごはんはしっかり食べたほうが良い ” は常識的ですが、「朝食にパンや白米をしっかり食べたのに学校・職場に行くとお昼前なのにものすごくお腹がすく」という経験はありませんか。
朝食はパンや白米 ⇓ インシュリン放出で低血糖 昼前に激しい空腹 ⇓ 昼食でまた糖質 ⇓ インシュリン放出で低血糖 昼休みや午後に強烈な眠気
という悪循環の人は結構な数いらっしゃるのではないでしょうか。
私も以前はこんな感じでしたが、これは典型的な低血糖症状です。
私たち夫婦も朝ごはんをたまごやココナッツオイル入りのコーヒーなどで糖質を少なくしてから、お腹が空かずに日中の眠気も無くなり、仕事が捗るようになりました。
そもそも糖質を取らなければ血液中に糖が増えないからです。
低糖質な食事の時の血糖変動イメージは以下のような形です。
糖質過多による神経や精神への悪影響は深刻
インシュリンの過剰放出は神経や精神にも悪影響を及ぼします。
血糖値の乱高下が激しい=調整のための神経伝達を酷使する
とのことから自律神経の疲弊が生じます。
何かを使えば何かが消費されます。この場合、血糖調整のために神経のエネルギーが使われ、思考・学習のためのエネルギーが相対的に減ることが、母子ともに精神障害となる一要因ではないかと考えます。
事実、糖質摂取と脳の機能・精神との関連が以下のように報告されています。
○血糖値の乱高下や低血糖の発作が多いことなどの影響が知能低下の原因
○小児の重症てんかんの治療にケトン食※が有効
※良質な脂質メインの食事のこと
○糖質依存とADHD(注意欠陥多動性障害)の類似性
・落ち着きがない
・イライラしやすく、すぐカッとなる
・集中できない
・集団行動におとなしく参加できない
・感情を我慢できず、駄々をこねる
○マサチューセッツ工科大学による子どもたちの砂糖消費量別の研究
砂糖消費量の一番高かった群は一番消費量が少なかった群に比べ、IQが25%も低かった
○ブリストル大学の研究
甘いものやポテトチップスを食べていた幼児は、将来的にIQが低くなる
○Nature Scientific Report
甘い食べ物や飲料からの砂糖摂取が多いと、精神障害の割合が23%高くなる
宗田哲夫:ケトン体が人類を救う、赤ちゃんのための妊婦食、山本義徳:アスリートのための最新栄養学(上)
”食べたもので体ができる、という認識はみんな持っているが、「食べたものでこころもできる」という認識はほとんど持っていない”
と、宗田医師はするどい指摘をしています。
妊娠時の肥満と巨大児、糖質赤ちゃん
インシュリンは脂肪細胞にも糖質を運びます。
「妊娠したから栄養を取る」はいいのですが「糖質でカロリーを取る」ではインシュリンが出すぎて体脂肪合成が進み、必要以上に太ります。
妊娠すると10kg程体重が増えますが、内訳は赤ちゃん3kg、羊水0.8 kg、胎盤0.7kg、子宮肥大1kg、乳房1kg、血液量増加1.5kg、その他脂肪増加2kgで合計10kg程は必ず必要なものです。
これは必ず元に戻るものです。もし産後に太ったと感じるなら、妊娠したから太ったのではなく、単に糖質をたくさんとっていただけです。
さらに糖質過多は母体だけでなく、赤ちゃんも太らせます。
胎盤を通して糖を必要以上に与え、赤ちゃんの体内でインシュリンを過剰に出させるからです。
そうすると巨大児になり、難産になります。4,000g以上は血糖値管理の失敗と見なされます。
3,000g前後の平均が最も良いのです。
「うちの子は大きくて発育が良い」と思ってる人がいますが、単に不要な栄養を無駄に与えた結果だと個人的には思います。
また、生まれてからも必要以上にぷくぷくしている子を見かけます。
脂肪の付きすぎなのに ” ちぎりパンみたいな腕でかわいい~ ” とインスタに投稿している母親がいますが、それは糖質を与えすぎて”糖質赤ちゃん”にしてしまった結果です。
母乳の成分は母親の食生活に大きく影響を受けます。
糖質過多の母乳を飲まされ、離乳食が始まればおかゆやうどんなどの糖質ばかり…
カロリーを与えているだけで栄養は与えていないこと、子供の肥満は親の責任である現実から逃げてはいけません。
糖質をやめるには ” 知ること ” が最も重要、糖質を止められないのは好みではなく”中毒”
「甘いもの控えた方が良いのはわかってるけど、好きだから止められない」
というのは勘違いです。甘みは報酬系という脳へ快楽を伝えるもので、コカインなどの麻薬と同じ神経経路を使います。
甘みは好みではなく、”中毒・依存”です。
ラットにコカイン、人口甘味料、砂糖を与えて依存度を測る実験を行ったところ、依存度の大きさは
砂糖 > 人口甘味料 > コカイン
だったそうです。食欲の抑制信号にも打ち勝ってしまいます。
本来、味を感じることには生存に必要な意味合いがあります。
旨味:身体にとって良質なタンパク質・アミノ酸が存在
塩味:神経伝達に必要なナトリウムが存在
苦味、酸味:毒がある、腐っている=身体に不要なものが存在
というように、生命維持に必要な情報を教えてくれます。
しかし、糖質はほんの少しで足りるにも関わらず、その昔希少な存在であったために、少量で強い報酬系シグナルを脳に伝えてしまい、もっともっと欲しくなります。
”自分は甘いものが好きだから止められない”という訳ではないのです。
意思が弱いとかでもありません。簡単に糖質を我慢できる人は、たまたま他に優先事項があるだけです。
なのでまずは「自分の状態を知る」ことから始めればよいかと思います。
スイーツをつい食べてしまっても「あ、今報酬系シグナルに支配されているな」と認識して食べるのと、何も考えずに好きだからと食べるのでは全く違います。
毎回の認識の積み重ねで、
10回に1回はスイーツじゃなくチーズやナッツを選択
⇓
タンパク質の旨味と脂質の方が徐々に好きになる
⇓
糖質を食べる量や回数が徐々に少なくなる
といった具合で、自分の身体を徐々に考えられるようになると思います。
次回に紹介する甘味料での代用という手もあります。
ましてや妊娠のため、子供のためとなったら意識改革はより進むと思います。
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